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日曜日、今日は何をする?

日曜日の朝、晴天。おでかけ日和。フリーマーケットにも最適。ラジオのアナウンサーが尋ねる。
- 今日は何をしますか?
リスナーの女性が元気に答える。
- ポテトフライです。
フィリップ・ドレルム著「祖母がこんなの持ってたよ」の中にある「日曜日、何をする?」から。

読みながら、こういう抑揚の本をどこかで読んだと考えていた。
フランスの日常、どこにでもある風景。
ささやかな出来事。映画、ラブ・アクチアリーのプロバンスでの英国ミステリ作家とポルトガル娘のような穏やかな陽射し。
何の本だっけ。
考えながら旧市街に出かける。
観光客が行き交う町。
わからない言葉の中に時々英語、ドイツ語が聞こえてくる。子供連れ、車椅子も多い。
どこかで見たような人が向かいから歩いていた。
中年男性。顔の真ん中にパーツが集まった風貌。白人、白髪。ブルーアイ。
ちょっと内気そうな優しげな雰囲気。
会社? 町医?
誰だっけ。
目が合ったので会釈だけしてすれ違う。
外国人の顔は見分けがつかない。
小さい町、無難にことが済むことを、祈るしかない。


思い出せないことふたつ。
自分、これで大丈夫かい、叱咤しつつ、思い出せないことすらいつしか忘れた。


と思っていたら一晩経って思い出した。

昨日出くわしたあの人ラブ・アクチュアリー、Mrビーンの脚本家、リチャード・カーティス監督に似ていたんだ。
まぁ当人とは思わない。現在の監督は、ラブ・アクチュアリー時代よりも数年齢を経ていることだし、
似た系の、見る人が見ると全く別人の男性だったのだろう。
まったく外国人、どの顔も一緒に見える。

そして「祖母がこんなの持ってたよ」
南仏プロヴァンス本で一躍有名になったピーター・メイルだ。
観点もノリもテンポも文体も、方言も空気も風景もまるで違う。
けれど、出くわした人間の、自己主張への迷いのなさがどちらも同じ。
自分の考えを腹蔵なく述べ、相手の意見はそれでそれ。
相手に合わせる必要はない。
そして意表を突かれた著者(フィリップ・ドレルム)や外国人(ムッシュー・メイル)が、見解を心のなかで発酵をさせる。

ざっと読んで、そんな印象を受けたのだけれど、違うかな?
外国の本は、どの本をとっても一緒に見える?


by mkbookies | 2014-08-10 16:07 | 洋書

「祖母がこんなの持ってたよ」

もしくは「田舎(さと)にあったな、こんな物」

ビール、のフィリップ・ドレルムが2008年に出した随筆集。
外国人でも知っていると便利、というような、半分紋切り型のフレーズの題名が並んでいる。
- 人生をやり直す
- ちょっと多いけれど、いい?
- 携帯を切るのを忘れないで下さい
- 今日は何しますか
- 変えれるよ
他。

中身は各フレーズにつながるエッセイ。

タイトルは日曜日の午後、おそらくパリでの一風景。
市をひやかす散歩人が言う。
「祖母がこんなの持ってたよ」

ちんけなものだと言っているいるわけではない。
似たようなものが郷にあった。
骨董ではない、日常用の、あればちょっと便利だったもの。
使いこまれて、古びて捨てられた小物。
こうやって明けて、こうやって挽いたんだよな。こう、こう。
語りながら懐かしさがこみ上げる。
ふと思い出すその瞬間が愛おしい。


二、三ページで綴られる掌編エッセイ。小沼丹に似た雰囲気で、とても一気には読みきれない。
各話が世界を孕んでいる。


Philippe DELERM 著 「Ma grand-mère avait les mêmes」  2008年出版

by mkbookies | 2014-08-07 16:21 | 洋書

フィリップ ドレルム YA本(中学生辺りを対象とした本)


はまると同じ著者を読みたくなる性質で、図書館で何冊か借りてきた。
ビールをゆっくり再読しながら、まずは児童書にあったElle s'appelait Marine、(直訳:彼女の名前はマリン)1998年著と Ce Voyage (この旅)2005年著から手を付ける。
前者は友達の少ない12才の男の子。春先の転校してきた女の子が、実は近所の邸宅に越してきた子だった。協調性がなく、クラスでもうく存在だが、学校以外に忙しいことがあったのだ。家の事情だとか、-画家のお父さんとその彼女との3人暮らし-、町興しの原発反対運動だとか。主人公のお父さんは原発賛成繁栄万歳派の父。あそこの子とはあんまり付き合わないほうがいいわよ。親からやんわりと反対される。けれどゲリラ的な反対運動、見に行かずにはいられない。だって彼女が関わっているのだから。

「旅」は中学生の男の子。ガールフレンドもいて、幼なじみの友だちもいる。同性の男の子。けれど、ガールフレンドの話を打ち明けた途端、幼なじみの態度が変になった。あいつも彼女が好きだったのか。それと前後して転校生がやってきた。転入理由に教師は口を濁す。そしてどの教師も、この男子生徒からあからさまに目をそらしている。

「ビール」や「スピッツウェッグ」とは違って、文体はいたって普通。読みやすさとわかりやすさを基本としている。どこから読んでも正しいYA、ジュブナイル。作者の親は教員で、本人も先生。おまけに演劇やサッカーなども指導し、現場を体験しているためか、生徒に妄想は抱かない。「マリン」はしごく正当な青春物語、そして「旅」はごく些細な脇道から、取り返しもつかない結果へと向かっていった。(詳しくは下のMoreへ。ネタバレあり)


なにはともあれ、生徒の振りをした児童書ではなく、自分の気持ち、焦れた感情を書いているのかも、と思わせてくれる。

しかしまぁこの作者、教職は五十代後半で退職したけれど、それまでの約二十年間、二足のわらじを履きながら約四十冊を出版。長編あり。短編あり。どうやったらそこまで精力的に仕事ができるのだろう。
こういう人からすると、時間がないっていうのは、ただの言い訳にすぎないのだろうなぁ。


More ネタバレありです
by mkbookies | 2014-07-08 04:32 | 洋書

フィリップ ドレルム

ちょっとふ抜け気味なので軽くフィリップ・ドレルム。
邦題が
ビールの最初の一口―とその他のささやかな楽しみ」と、原題「ムッシュー スピッツウェグ」。

事の始まりは
「バジル氏の優雅な生活」 今から二~三十年も前の少女漫画。坂田靖子著。
何故か突然
読みたくなり本屋に出向いた。
フランスの片田舎の本屋に日本の漫画などあるよしもない。
そんなことは百も承知。
ただ本屋に出かける理由づけにすぎない。
目新しい物を探して、ふらふらするうちにふと目に入ったのが
「ムッシュー スピッツウェグ

ジャケ、一目惚れ。

98年、2001年、2009年に出版されたスピッツウェッグ氏三作を一冊にしたポケット本。

パリに住まなければいけない、ではじまり、独身男の見るパリが淡々とつづられている。
冴えない主人公ではあるにしろ、その目に映る情景からは匂いや色まで伝わってくる。

口調が詩的。
こういうのを書く人って、どういう人なのだろう。気になり
図書館で「ビール」を借りてきた。
こちらは自転車とチャーリー(チャリ)の違い、日曜日のケーキ詰め合わせ、浜辺で読書、お気に入りのものを集めて語る、という趣向。
こういう風に廻りが見えると、どこに住んでも芸術が書けそう。
ちょっとこじゃれた単語とリズムのいい長めの一文一文が、小沼丹の随筆を思わせる。
バジル氏のような優雅な暮らしも不意打ちもないけれど、どこか力の抜けた空気が充満していて、のんびり読むには最適。
買おうかと思ったけれど、まだポケット版が出ていない模様。
図書館の本は簡素で上質紙なクリーム色の現代フレンチ装丁の本。
それはそれでいい本なのだけれど。

ビールの最初の一口―とその他のささやかな楽しみ。
 - 古本屋で出会う状態良好なフィリップ・
ドレルム
そんな一章を付け加えたくなる本。
著者にとっては迷惑か。

Philippe DELERM著 Monsieur Spitzweg、LA PREMIERE GORGEE DE BIERE ET AUTRES PLAISIRS MINUSCULES
by mkbookies | 2014-07-05 05:16 | 洋書