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はちみつ

朝市に蜂蜜のスタンドが出ている。プラスチックの簡単な入れ物に蓋を載せただけのパッケージ。はちみつなので、小さなテーブルに山と並べられているのだが、売り手のおっちゃんがいた例(ためし)がない。

以前はマダムと一緒に出店していた。マダムが怪我をしたとか体を壊したとかで孫やおっちゃんが代わりばんこで店を出すようになり、最近はおっちゃんがメイン。
このおっちゃんを捕まえるのに毎回一苦労。

前の野菜売りのスタンドで油を売っていたらいいほうで、たまに広場の反対側まで散歩に出ている。
一度市場の出口でやっと見つけたと思えば
- 今からコーヒー飲んでくる。また後でおいで。
翌週面倒くさくなって、30メートルは離れている別のスタンドではちみつを買ったら、店主の後ろからにゅっと出てきたり。
同業者同士だと話も合うらしい。

毎週朝市に行く度に、今日はどこで会えるか、ちょっと楽しみにしているひょうひょうとしたオヤジ。

本屋で表紙を見るなり、この商売っけのない親父を思い出し、思わず購入。
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原題Le Miel(直訳:はちみつ)Slobodan DESPOT著


薬草療法士とでもいうのだろうか、Herboristの女性が、大げんかをしている男たちと出くわした。故障した車を前に若目の方が怒り狂っている。もう絞めてやると、でめえのせいで、とか騒いでいる。あの時300ドイツマルクを使ったのがケチのつきはじめ。300さえあれば新しい車を買って云々。
療法士は思わず手持ちの300を出して、押し付けると逃げるようにその場を去った。

数カ月後、悪態男が療法士を訪ね当ててきた。300マルクをかえすという。それから蜂蜜を50キロ持参してきた。
薬として診療所では月に10キロは必要だ。今年は蜂蜜が不作で、工面に苦り切っていたところ。
- 言葉が足りなくて申し訳なかったのですが、300マルクは貸したんじゃなく、差し上げたんです。蜂蜜は、いくら払えば。
ー うちのクソ親父がもう何ヶ月も返せ返せって煩いんだ。それに、蜂蜜は売るんじゃない。年寄りが持って行けっていって聞かないから持ってきたんで。これは置いていく。
 療法士は男に事情を聞いてみた。男の話は時をさかのぼり、事の発端はユーゴスラビア紛争。途方もなく長い道のりを経た話が語られる。
今はもうないユーゴスラビア、クロアチア、そして廃虚へ父親を迎えに行った話。

※※※※※※※ 以下感想。

 ユーゴスラビア、クロアチア、 紛争があったのは知っていたが、すべてが遠い国の出来事だった。
始まりは梨木香歩のピスタチオのような幻想的な空気を持っていたが、進むに連れて深刻になっていく。なにしろ話の根底は民族紛争、戦いに暴力。昨日の同僚が今日の敵。行く先々に障害が立ちふさがる。
その影とは対照的に、男の父親が妙な魅力を持っている。パッと見はしょぼい。養蜂一筋、どこか人を喰った、ひょうひょうと直感で動くひょろひょろのトシヨリ。
やることなすこと説明足らずのひとりよがりな行き当たりばったり。しかそれが会った人を助けたりする。荒れた世界に魔法をかけるような存在。
この親父がいなければ、この話は最後まで読み続けられなかった。

生まれた国を見たことのない、スザンナという名の女性に捧げられた本。
この父親は、誰かモデルがいるのだろうか。





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by mkbookies | 2015-12-24 07:01 | 洋書 | Comments(0)

媚薬読了

ふりかえれば3/17、読みかけていた本をやっと読了。

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スイスに住むスリランカ人は有名レストランで料理補助として働いていた。
カレーなら僕が、と言ってしまい先輩の怒りを買う。雰囲気が悪くなりかけたところを美人のウエイトレス(スイス人)が仲裁に入った。スリランカボーイはお礼にとカレーをごちそうすることになる。

招待した先はぼろアパート、しかし雰囲気も料理も超逸品。ウェイトレスはそのまま一晩泊まってしまった。
- 変よ、昨日の私は明らかに変だった。どうしてああいうことになったの、あなた、私に何を食べさせたの?

ここからスリランカボーイ大伯母直伝の、スリランカ料理の話になり、ことの流れでカップル相手の商売に踏み込んでいくことになる。
生活保護を受け取りながらの起業、LOVEフードの行き先はいかに。

※※※※※

スリランカのタミル族独立運動、故郷にいる大伯母の病気、スイスにおける移民、シンハラ人(タミル族とは対立関係にある民族)の女の子との出会い、そしてスイスの経済状況。
画策の裏には女あり。料理を通して純朴な主人公は、さまざまな争いを見ることになる。
それでも全体的に食堂かたつむりのようなしんとした空気が流れている。これが訳のせいなのか原文からの賜物なのか、そこまでは私にはわからない。

ドイツの料理本から思いついた話ということで、最後に料理のレシピもあり。
作者とスリランカ、タイ、アジアとの関係はよくわからないが、書くにあたっての取材先のリストが圧巻。
その後ドイツ語からフランス語に訳するに当たって、マレーシア語、英語のわかる訳者さんからのチェックまで入る。
本は沢山の人の手で作られる。
読後は爽やか。
民族紛争、大伯母の病気の話はつらかったけれど、料理人プロ根性物語、楽しく読ませてもらいました。

Martin SUTER著 le cuisinier (原題 Der Koch)(3/17はこちら

ちなみに元になった料理の本が 「Verwegen kochen」Klaus Dahlbeck、Heiko Antoniewicz 著

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by mkbookies | 2014-06-15 19:49 | 洋書 | Comments(0)

媚薬

先日の日記に書いた媚薬のケンタリング、読みはじめる。
ドイツの話だと思っていたらスイスだった。インドではなくパキスタンでもなくスリランカ。(地理がわかっていない)
先日のブログを修正。
お笑い調子だと思ってページをめくると食堂かたつむりが広がっているし。
まだ読みはじめたばかりなので、この先どうなるかはわからないけれど、今のところはしんみりと読んでいる。
このタミル人の調理補助師は、おばあちゃんから学んだ料理の技で、これまた手の込んだ料理をしはるんですわ。
職場のアイドルスイス人をアパートに招待し、前菜、カレーでもてなす。作る過程も細かければ、食事の風景も会話も繊細。
フォークもナイフもいらない、床に座って指でディナー。

じっくり紹介したいのだけれど、きっとどこかの誰かが原語から、雰囲気のあふれる翻訳を編み出してくれるだろうから、
こちらはまずは読む方に専念させていただこう。

香辛料をちりばめて、ガスと素朴なオーブンで時間をかけて料理をしたくなる。
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& ドイツ、千夜一夜勤務物語。これも読みかけ。
まだ第二話がおわったところ。(当然終わりは“続く”)
なんとか今日もクリアした、やった~と狂喜する主人公。
家族をレストランへ、と思ったところに娘が言い出す。
- 英語やってもいいって約束してくれたでしょ。バスケットも。
金は天下の廻りもの。先立つものが入ると、明日は約束してくれるだろうか。

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by mkbookies | 2014-03-17 14:24 | 洋書 | Comments(0)

ディナーに媚薬を

本屋でそそられ本

マルティン・ズーター著 料理人 
(フランス表紙)

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(ドイツ原書)


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裏表紙にある紹介文を斜め読み。

スイスへ移り住んだタミル人が、ケンタリング、家で食べられる家庭料理屋を開業。カップル用に媚薬を盛り込み、話はややこしくなっていく。

インド半島をネタにしたコメディ小説では、フランスではIKEAに釘入りのベットを買いに行き、パリからロンドン、ロンドンからバルセロナへとたらい回しになる修行僧の話があったが、これはそれの元祖版? 
(Romain Puértolas著 L'extraordinaire voyage du fakir qui était resté coincé dans une armoire Ikea-イケアのタンスに閉じ込められた修行僧の世にも不思議な旅の話
それともそういう話は常識レベルなのだろうか。

読むか読まないかは不明だが、けったいな本があるものだと、なんだか本屋でじっくり考えさせられた一冊。
図書館で探してみる。

ちなみにイケアの修行僧の本の表紙はこれ。
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表紙も派手だが中身も派手。


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by mkbookies | 2014-03-09 05:21 | 洋書 | Comments(0)