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No.0

買わない、買わないと思いつつ本屋に入る。
買わないなら入らないでくれと言うのが店の本音かも知れない。
そう思いつつも入店してしまう。

“大型、ハードカバーは高くて場所をとる。本はやっぱりポケット版だよね”
買わないで見るだけなら画集を見ようがハードカバー全三巻を見ようが同じことなのだけれど、小心者なのでポケット版のコーナーへ。


シャルロット・リンクの双子の話、ジェーンオースティンの姪っ子への手紙、ベストセラー作家の新作、定番ミステリ、
そそられる本はいくつもある。
シャルロット・リンクに関しては、“ミステリは今読んでいるエーコのフーコの振り子を読み終わってから”
ジェーンオースティンの姪っ子への手紙は“なんでフランス語版で読まんといかんねん”
ベストセラー作家の新刊に関しては、“図書館で借りよう”
定番ミステリも“図書館、図書館”
目につくごとに言い訳を心のなかであげていく。

今読んでいのは先日ブログに書いた「ロングボーン」と「フーコーの振り子」
「ロングボーン」はともかく、「振り子」は何年かかることか。
“ホントに本屋に何しに来たんだ”
思いつつ気合を入れて店を出ようとすると、
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ウンベルト・エーコの新作。№0。

大型本。

訳本が出るのは11月頃だと思っていた。
何語? まさかフランスの本屋にイタリア語で?
半信半疑で開いてみる。
中身はフランス語。ひっくり返すと解説もフランス語。下にはハードカバーな値段が明記。

手にとったが最後。

本屋で今日も負け戦。

※※※

6月、朝目を覚ますと水が出なくなっていた。
断水かとおもいきや同じアパートの住人は何の不自由もしていない。
「元栓を閉めたんじゃないんですか」隣人は言うが元栓なんてどこにあるのかもわからない。
 「ほーら締めてあるでしょう」隣人が教えてくれた配管の、コックをひねると水が出た。
昨日の夜は水道を使った覚えがある。一人暮らしでどうしてこんなことになったんだろう。
けれどそういえば昨日の夜、蛇口から水滴がこぼれる音がしなかったような。
どうして水道は止まったんだろう。
誰かがうちを探りに来た?
コンピュータのデータを見に来たのか?
40年前のあの忌まわしい事件が頭に蘇ってくる。
あのデータが必要なのか。
あの件だったら、今でもはっきり覚えている。

主人公は仕事先に出版社を渡り歩いている。百科事典の編集もしたし、ドイツ語訳の仕事もした。
子供の頃からドイツ語に触れて育ったおかげで、何の苦労もなくプロレベルの仕事をこなすことが出来た。
手書きの文章を読む仕事もあった。
寝っころがってもできるような、読むだけで出版社は感謝してくれる。なんておいしい仕事だったことか。
けれども結局は語学力が災いして大学を卒業することができなかった。
厄介な事件に巻き込まれる破目にも陥った。
はじまりはゴーストライターの仕事を依頼されたことだった。

ー 君の文才に目をつけていたんだ。
言われて礼を言う主人公に、依頼主はつけくわえる。
ー その文才に誰も気づいていないけれど。
一言多い注文主からのご依頼は、“月刊誌の出版裏話回想録”
出版されることのなかった月刊誌について、編集会議等の12ヶ月分。
進行方向は依頼人が決める。
謝礼は多し。現金払い。
真意は政治、経済界への顔つなぎ?
いや、出版差し止めのために、大金を払ってもらうことが目的かもしれない。
一言で言えば、ゆすり?
そのためには実際に編集者、記者を雇って、打ち合わせを進める。
雑誌のタイトルは「明日」

そして仲間のひとりが殺された。

               ウンベルト・エーコ著「Numero zero」
※※※

まだ読みはじめたばかり。
「プラハの墓地」や「フーコーの振り子」とは違って、歴史的事実や秘密結社、小難しいい観念は今のところ出てこない。
量もいつもの3分の1くらいだし、今回はちょっと軽快な気配。
それでも史実にまつわる、血なまぐさい事件が、やっぱりどこからか湧いてきそう。


by mkbookies | 2015-05-15 05:09 | 洋書
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