人気ブログランキング | 話題のタグを見る

フィリップ ドレルム YA本(中学生辺りを対象とした本)


はまると同じ著者を読みたくなる性質で、図書館で何冊か借りてきた。
ビールをゆっくり再読しながら、まずは児童書にあったElle s'appelait Marine、(直訳:彼女の名前はマリン)1998年著と Ce Voyage (この旅)2005年著から手を付ける。
前者は友達の少ない12才の男の子。春先の転校してきた女の子が、実は近所の邸宅に越してきた子だった。協調性がなく、クラスでもうく存在だが、学校以外に忙しいことがあったのだ。家の事情だとか、-画家のお父さんとその彼女との3人暮らし-、町興しの原発反対運動だとか。主人公のお父さんは原発賛成繁栄万歳派の父。あそこの子とはあんまり付き合わないほうがいいわよ。親からやんわりと反対される。けれどゲリラ的な反対運動、見に行かずにはいられない。だって彼女が関わっているのだから。

「旅」は中学生の男の子。ガールフレンドもいて、幼なじみの友だちもいる。同性の男の子。けれど、ガールフレンドの話を打ち明けた途端、幼なじみの態度が変になった。あいつも彼女が好きだったのか。それと前後して転校生がやってきた。転入理由に教師は口を濁す。そしてどの教師も、この男子生徒からあからさまに目をそらしている。

「ビール」や「スピッツウェッグ」とは違って、文体はいたって普通。読みやすさとわかりやすさを基本としている。どこから読んでも正しいYA、ジュブナイル。作者の親は教員で、本人も先生。おまけに演劇やサッカーなども指導し、現場を体験しているためか、生徒に妄想は抱かない。「マリン」はしごく正当な青春物語、そして「旅」はごく些細な脇道から、取り返しもつかない結果へと向かっていった。(詳しくは下のMoreへ。ネタバレあり)


なにはともあれ、生徒の振りをした児童書ではなく、自分の気持ち、焦れた感情を書いているのかも、と思わせてくれる。

しかしまぁこの作者、教職は五十代後半で退職したけれど、それまでの約二十年間、二足のわらじを履きながら約四十冊を出版。長編あり。短編あり。どうやったらそこまで精力的に仕事ができるのだろう。
こういう人からすると、時間がないっていうのは、ただの言い訳にすぎないのだろうなぁ。




※※※ More ネタバレありです ※※※

どこにでもありそうな町のどこにでもありそうな中学の物語。15才、クラスにはもう彼氏と暮らしている女の子が二人いる。いわくありげな転校生が入ってきた。授業は我関せず、教師は明らかに敬遠している。一緒にタバコ吸おうぜと声をかけられても、ガキの相手はしてられないよ、と鼻であしらう孤立ボーイ。しかしその転入生、幼なじみに声をかけた。幼なじみもなんで自分が、と戸惑ったよう。

そして数日後にはベンツやBMWに乗った若い男に目をつけられた。売人リクルート。主人公がなんとか救出し、まだまだやり直せるとおもいきや。

教育現場育ちの先生、リアリティありすぎな本でした。

でもこのラスト、ここからミステリになるんじゃないの?
そこまで追って、藪から蛇を出したくないのが、この国の教育現場というものなのかもしれない。

by mkbookies | 2014-07-08 04:32 | 洋書
<< ツール・ド・フランス フィリップ ドレルム >>