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大統領の料理人 実話の話

正確にはデザート担当。
ド・ゴール大統領からシラクの時代まで勤めたデザート職人が書いた本。

パン屋に生まれ中学を出て修行をした後、父の友人のつてで大統領邸へ。
時代はアルジェリア解放問題でフランス自体が揺れていた頃。
警備が厳重な大統領邸に、17才はどきどきしながら足を踏み入れる。
ここで大統領といきなり鼻を突きあわせたら、きっとぼくは卒倒してしまう。

ド・ゴール大統領は2メートル近くあった将軍だっだから、17歳でなくても卒倒するだろう。
当時アスパラガスのようにひょろひょろした男の子はまずは面談を受ける。両親の父母の代まで調べて近所、知人に人柄を確認。性格、交流関係、ありとあらゆる身元調査。
聖人君主とは程遠い、店の女の子とつきあったり、遊びに出かけたりと普通の素行をしていたが、無事に採用に落ち着いた。

政治家、軍関係が出入りするエリゼ宮、最近また暴露本のようなものも出ているが、こちらは大統領本人とは接点の薄い、厨房から見たフランス、パリ。

いくら働いて、年季を積んでも時事が安泰を許さない。
シラク時代のある日曜日、生鮮食品と書かれた小包が届く。
- どこから届いた?
検査に回しながら、鮮度が気になる料理人。

65才で引退。
もうエリゼ宮には戻らない。
思う矢先に伝達が届いた。
 - シラク夫人からの意向です。土曜日は予定を入れないで下さい。

大統領の誕生会のデザート作りを再度担当。
前年の腕が人を呼ぶ。

フランスは終身雇用制など存在しない国だと思っていた。
人間関係を大切にして、きちんと仕事をする大切さを確認させてくれた。

国賓級 & 各大統領のお好みデザートレシピ付き。

でも実は、読んでいて個人的に一番気になったのは、ド・ゴール大統領夫人からのプレゼントだった。
第一子誕生をどこから耳にしたのだろう。
パパとなったデザート担当に、大きな箱に、手編みのベビーニットシューズ、ぬいぐるみのクマやら。
職場のボスの奥様からでも、こんなにもらったらきっと私も卒倒してしまう。

フランスのおっちゃん、というと怒られそうだが、
デザート満載にもかかわらず、心がほんわり温かくなる本。

こういう目で見たら、世界動向もするりと頭に入るんだけどなぁ。

Les Cuisines de L'Ëlysée
Francis LOIGET

by mkbookies | 2014-05-17 14:46 | 洋書
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