例によって表紙に惹かれた本。
裏表紙の紹介が - 縫製の仕事をさせてあげる。そのほうがいいでしょう。きついけれど座ってできる。どう? 子供のためよ。 1944年ドイツの捕虜収容所ラベンスブリュックには4千人の収容女性がいた。その中でKinderzimmer(子供部屋)は心の糧になっていた。 立ち読みでパラっとめくった中に主人公は「フランス人でユダヤ系でもなく、なんの不具合もないわたしが」とあり、捕虜収容所で働くことになったパターンだと思いこんで読みはじめた。 しかし途中でそこまで甘い話ではないことに気がつく。 レジスタンスでひっかかった20才の女の子。 こういう生活をするには、まだコドモといっていいだろう。 引っ張られた時は妊娠初期。医師の検診からは「先月生理があった」で言い抜けたが、月とともに問題も迫る。 収容所での出産は母子ともに死を意味する。 特に生まれてくる子に選択の余地はない。 どうしたらいいのだろう? それどころか女の子には出産の知識もない。 そんな彼女に力になってくれる隣人、同室の人、子沢山孫もいそうな経産婦。 誰もが疲れ、飢えに寒さあえぐ中、いったいこれからどうなるのだろう。 Kinderzimmer Valentine GOBY著 以前本屋に出回った時、手を出しかねた。 収容所、閉鎖された環境の話はいくつか読んだことがある。 夜と霧(ベルンハルト・シュリンク)、朗読者(ベルンハルト・シュリンク)、ロシアに至っては オリガ・モリソヴナの反語法 (米原万里)、明るい夜暗い昼(エヴゲ-ニア・ギンズブルグ)三巻。ちゃーず(遠藤誉)は中国だったが壮絶だった。あちらこちらで聞いた満州の話もトラウマになっている。こういう話は概して後を引くものだ。その上この地にも収容所跡がある。重すぎだ。 と、理由を山ほどつけて買わなかった本が図書館にあった。借りた。 図書館は本へのハードルを低くしてくれる。しかしその先に収容者本人の話が広がっているとは夢にも思っていなかった。 やっぱり小心者のわたしには合わない。 かと言って途中で投げ出すと後を引く。 図書館本なので次にいつ会えるかは予想もつかない。 またもう理由をつけながら、乗りかかった船でなんとかページをめくる。 著者が戦後世代の小説家で、歴史家ではない。フランス人ということもあってか収容所生活の描写にも緊迫感が薄い。 夜の女性同士の声を潜めたおしゃべりが中心になって話が動き、暴力的な描写が皆無。実情は有名なので新鮮味はない、とまだページをめくることができたが、収容所を出たあとからが大変だった。 この先ネタバレありの全般感想 子供が生まれ、3ヶ月しかここにはいられない。3ヶ月を迎えた子供も少ない。なにより厳寒の冬は超えられないわ。収容所での予告は言われたとおりとなり、失望の矢先に雪の深い中移動を強いられる。 女たちは赤子を抱え深い雪の中さらに奥へと連れて行かれた。 収容所に較べれば、着いた先は天国に見えたが。 ※※※※※ 収容所体験を高校生に語る、というテーマで、語りはじめたスザンヌ。 本筋は二十才のミラの視点で綴られていたので、娘の話かいなと読みはじめはかなり混乱した。 おまけに収容者側の話だったし。 赤子の手をひねるかのように語り手に翻弄され、気がついたらドイツの強制収容所に。もう途中ではやめられなくなっていた。 戦争を語る一方、戦後の二十才の度肝を抜く展開もあり、後半は息もつけない展開だった。 作者は大人を対象にした本と同時にティーンエイジャーの本を十冊以上書いている人。 ストーリーテラーとはこの人を言うのか思えるほど、後半を一気に読ませる本だった。
by mkbookies
| 2014-02-23 15:59
| 洋書
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