デパートで7才の女の子、ミリーはママに言われた。
「ここで待っててね」 それがママの最後の言葉だった。 すっぽかしを食っても、きちんと待っているよい娘。 そばのマネキンと友だちになったり、「すぐ戻るから」とママに伝言を残してデパートを探検したりするうちに、カールと知りあう。 87才の養老施設を脱走した男やもめ。 その後ミリーの家の向かいに住む、82才の引きこもり寡婦も加わって、 4人の珍道中がはじまるとは、一体誰に想像ができただろうか。 4人? ミリーとカール、アガサとマネキン。 二人分のバス代だけでメルボルンを目指す。 ママはどうやらメルボルンに向かった模様。6日後にはアメリカに飛び立つという。大変大変、急がなくっちゃ。 ※※※ この物語には静がない。 メインの三人がひっきりなしに何かをしでかす。 生まれてきたからには攻めの姿勢にはいらないと。 自ら動く時が来た。 そして物事が動いていく。 久々に、読み終わるのが惜しい本。 オーストラリア発、ドタバタコメディ。 でもテーマは真剣。 「あなたもいつか死ぬのよ」 人に言ってやまない7才、 それから生物永遠のテーマ、「性」。 それ以外は、奇想天外な行動で、ピンチを切り抜けていく文無し旅行ストーリー。 単語は簡単、短文の連続でテンポはよし。登場人物は息づいている。 7才が主人公でこういう文章なら、通常児童書になるだろうが、永遠のテーマを抱えているので、完全に大人向けの本。 (永遠のテーマのメイン場面では、1ページ丸々一文、ピリオドなしで書かれていた。) それから人の好意より自分の目的重視という、モラルに欠ける破格の行動もあるので、「これは作り事なのだから、これは物語なのだから」とわかる人じゃないと、ちょいと危険。 この危なさがウケる秘訣? オーストラリアのベストセラーだそうな。 エピソードが盛りだくさんで、脇役も個性炸裂。語るよりもまず読んでもらいたい。 しかしあまりの臨場感のため、映画のトレーラー風に一発↓ 逃げろ、逃げるんだ、デパートで警察に押さえられながら叫ぶカール(87)、 墓場でマネキンを振りかざし、青少年との乱闘に加わるアガサ(82)、 あなたたち、家族じゃないんだ。とバスの女性運転手。 列車の中でマダム曰く、- 強烈に変な子ね。 ミリー(7) - わかってるわ。 ママ、私はここよ、食堂車のテーブルクロスとメニュー、ナプキンに、大々的に書くミリー。 そして彼女の口癖は あなたもいつか死ぬんだから。 ママァ、わたし連れてくるの、忘れてるよ~。 欠点があっても、言動が一致しなくても、心と行動が正反対でも、いいじゃないか、人間だもん。 Lost & Found (Brooke Davis著) オーストラリアンブックインダストリー賞、2015年フィクション部門受賞。 公式サイトはこちら、紹介ビデオあり。女の子が語りをやっているけれど、これはスタッフの娘さんだそうな。 あとがきに記されていた。 小さいころ母に強制された「お礼状」からはじまるあとがき。 応援してくれた人、環境、大学の教授への感謝の言葉へとつながっていく。 書いては見せ、書いては見せとしている間、はじめっから最後まで褒めまくってくれたのはお父様。 教授陣にも恵まれた。 「本泥棒」の マークース ズーサック、ローラーキングもオーストラリアだったのか。 奨学金で通わせてくれた環境へも感謝。 オスカーみたいだが、と本人が言いながら、親兄弟、親戚まで羅列。 大学生の答辞のようなものかいな。 つられて最後まで読んでしまった自分がいる。 ※※※※※※※ オーストラリアといえば映画でウォルト・ディズニーの約束(Saving Mr.Banks)というのがあった。あの子役が生粋のオーストラリアっ子。ああいうのがオージー英語なのかなあぁ。 次のもう一冊、オーストラリア本が読みかけであるので、次はこれを読むかもしれない。 左が英語版表紙、右はフランス語。 一人暮らしの母が、夜中に息子夫婦へ電話をかける。 「家の中に虎がいる気配がする」 これもなんだか、おいおいおい、という展開になりそうな。 Fiona Mcfarlane著 Night Guest にほんブログ村
by mkbookies
| 2015-10-19 04:06
| 洋書
|
カテゴリ
以前の記事
2021年 09月 2021年 08月 2021年 06月 2021年 05月 2021年 04月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 07月 2019年 09月 2018年 10月 2018年 05月 2018年 03月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 07月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 02月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 フォロー中のブログ
検索
外部リンク
タグ
徒然(78)
フランス(75) アメリカ(30) イギリス(21) イタリア(12) ドイツ(10) 独戦(8) 恋愛(7) 児童書(6) オーストラリア(5) ウンベルト・エーコ(5) オーストリア(4) 政治(4) スイス(4) コ-ジーミステリ(4) 日本(4) フィリップ ドレルム(4) アメリ・ノトン(4) ミステリ(3) mathias malzieu(3) その他のジャンル
最新の記事
ファン
|
ファン申請 |
||